医学文献を正確に読むためには、治療効果の指標を知らなければいけません。いくつかの指標の計算法と、NNT・NNHについてまとめてみます。
★NNT/Number Needed to Treat = 治療必要数
ある介入を対象者に行った場合、1人に効果が現れるまでに何人に介入する必要があるのかを表す。
例)100人を対象として、治療Aを行い10%の有病率が5%に減少したとする。治療Bを行い50%の有病率が25%に減少したとする。⇒有病の減少率はどちらも50%でも、絶対的な値をみると同じとは言えない。(同じように50%と表されると、臨床上はわずかな差であっても大きな数字に置き換えられるため、誤解を招きやすい)
⇒相対リスク減少率(Relative Risk Reduction:RRR)だけで表示されている論文は注意!絶対リスク減少率(ARR)とNNTを自分で計算して評価する必要があります。
★NNTの計算式
1/((介入前有病者数/全対象者数)-(介入後有病者数/全対象者数))
上記の例)治療A:NNT=1/(10人/100人-5人/100人)=20、治療B:NNT=1/(50人/100人-25人/100人)=4となる。⇒治療Aでは20人に治療すれば1人に効果が現れるのに対し、治療Bでは4人に治療すれば1人に効果が現れるといえる。
※NNTの尺度は人数なので正の値をとり、値が小さいほど介入の効果は大きいことを意味する。NNTがマイナスのときは対照群より成績が悪い(介入が害をもたらす可能性がある)ことを示す。
★NNH/Number Needed to Harm=有害必要数
治療の危険性を示す指標。NNTがマイナスの値となる時、マイナスの符号を削った値。
例)NNH=20(NNT=-20)の時、20人治療すると1人有害事象が発生するという意味。
★NNTの95%信頼区間
下限値の側の値が負になり、ベネフィットではなく害をもたらす値になる場合、上限値の側の値をnumber needed to treat for benefit (NNTB)、下限値の側の値をnumber needed to treat for harm (NNTH)と呼ぶこともある。

★治療効果の指標
・相対危険度(Relative Risk:RR):前向き研究で用いる
・オッズ比(Odds Ratio:OR):後ろ向き研究であるケースコントロール研究で用いる
・相対リスク減少率(Relative Risk Reduction:RRR):1からRRを引いた値
・絶対リスク減少率(Absolute Risk Reduction:ARR):両群のリスクの差をとった値

おまけ)NNS/Number Needed to Screen
介入がスクリーニングの場合「ある一定の期間に1件の有害事象の発生を防ぐためにスクリーニングする必要がある人数」
例)現喫煙者および前喫煙者を対象に、低線量ヘリカルCTスキャンを何人の人で毎年施行すれば、1年で1人の肺癌による死亡を防げるかということを表す。ランダム割付した2群で片方に毎年低線量ヘリカルCTスキャンを施行し、もう片方ではそれをしないでフォローアップし、肺癌の死亡をアウトカムとして調査することで求めることができる。